「獅身の女たち」
日本神話の神々を主題に幻想的な世界観で発表を重ねる日本画家、黒木美都子。
本展では「獅身の女たち」をテーマに新作15点を発表いたします。
ダイナミックでありながらも繊細な進化を遂げる黒木美都子の獅身の女たちをご高覧ください。
会期:3月20日(木)〜3月26日(水)
会場:Artglorieux GALLERY OF TOKYO (GINZA SIX 5F)
時間:10:30~20:30 *最終日は18時閉場
作品はオンラインからもご高覧いただけます。
▶︎黒木美都子作品リスト
「『獅身の女たち』の始まり」
「獅身女」には本来、スフィンクスという熟字訓を当てますが、私の描く『獅身の女』は文字通りに“ししんのおんな”と読んでいただければと思います。本展は、『獅身の女』は「美にして善なるのも」という人間完成の理想を追求し具体化する為のメタファーと考え、作品郡として発表することでその在り方に焦点を当てた個展です。
スフィンクスは最古の半人半獣のひとつで、美しい人間の女の顔に獅子の体と鷲の翼、時に蛇の尻尾を持つとされています。象徴主義の絵画の中では、その姿の解釈は作者それぞれでしたが、多くは美しい半人半獣の女スフィンクスが男を誘惑し、その誘惑は死を意味しました。男を破滅へと誘うファムファタルとして好まれ、官能的な作品が多く描かれていたのです。
しかし今、新しい時代にスフィンクス=獅身女という題材を描くことに、一体私は何を期待しているのでしょうか。
私の「獅身女」は美しい顔と美しい鉱物の身体を携えています。世俗から遠く離れた美しい面相は、従来の破滅や死といった終焉を予見させる心理的サディズムな“含み”とは無縁であり、無機的存在が大半を占めるその身体は、古典絵画の中で望まれてきた艶めかしい快楽の象徴から脱し、性の支配を超越した身体なのです。
そしてそれは普遍性を内包した、新たな美のシンボルと言えるでしょう。
今のところ善美の具体化は未聞でありますが、その片鱗を掴む依り代として「獅身女」はとても肌なじみが良いものでした。私が望むのは美しく堅牢な精神を備えた、崇高であり美の象徴、それが『獅身の女』なのです。
黒木美都子
「美しき火」8号
「肖像」15号
「変身するおんな」S10号
「The trust from love done」SM